昭和の時代…。丹精込めてヘンリー塚本がエロスを奏でる
昭和時代の名家と女中たちの悲哀
我々はここで、昭和という流動する時代の波に翻弄された一つの家族、その名も飯倉家と、そこで彼らに仕える二人の女中、お澄とお杉について語ろう。
飯倉家の中心であり、またその存在そのものが物語を切り開く飯倉精吾という人物、これが彼の名である。
彼はその専門とも言える作家業を有名なものとし、一目置かれる存在となっていた。
されども、その名声とは裏腹に、いわゆる好色の風体を持った者でもあったのだ。
精吾の妻は長い間病に苦しんでいたため、その世話に当たっていたのはお澄という女中だろう。
しかしながら、奇妙なことに精吾は病気の感染を恐れているのか、お澄に対してのみ関係を持つようになっていた。
そう、戦慄するべきであろう夫婦の愛の枠を超えた行為だ、そう断じざるを得まい。
もう一つの女中、お杉。
彼女の存在はこれまで私たちの目には余り映っていなかったが、ある一夜、彼女が主人である精吾の部屋に招かれる機会がやってきた。
どこまでも人間くさい情愛の表現であろう。
彼女たちは窮乏していたために、男性に体を許すしか選択肢が無いという状況に置かれていた。
これは女中たちが歌った哀歌、ならびにその生活そのものである。
その全てを丹念に、見事に綴っているのが、この作品を贈るヘンリー塚本である。


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